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[11]12月8日(水)。入院8日目。(第一章:12月1日〜12月12日・初めての入院。検査と薬とお食事と)

| 入院編

むくみで肉離れのような状態になっている足、特に太ももだが、入院前の「剣山拷問状態」は脱したものの、まだびりびりとした痛みが走る。このびりびりがどこまで無くなるかが、回復しているか否かを確かめる一つの目安になるんだろうな。

朝、窓を開けて外を眺めると、まだ暗い夜空に星とは違う輝きが目に止まった。かなり上空にあるのだろうが、どれくらいの高度かは分からない。月のそばに楕円形の形をした光と、それから少し離れた場所に3つの光点がまとまってまたたいている。それらの点滅は不規則で、飛行機ではありえないような微妙な運動を繰り返している。ヘリコプターにしては高度が高すぎる。

目の錯覚かとも思ったがそうでもないらしい。恐らくは人工衛星か「何か」の類だろう。しばらくして夜が明けるにつれて見えなくなったので、気にしないことにする。

朝食は食パンに牛乳、目玉焼き、きゃべつの千切り、バナナ。

今日は眼科検査が予定されていたが、順番がおしていて午後になりそうとの連絡を受ける。夜は利尿剤の関係で真夜中でも尿意をもよおす事が多く、長時間連続しての睡眠が取れにくいので、昼間少しでも睡眠時間を確保しておきたいところだが、昼間は昼間で病室の改装工事の音がうるさく、眠る事が出来ない。

それにしても年末からなのか、それとも自分のいるエリアが重症患者をメインにしたエリアだからなのかは不明だが、重度の看護が必要な患者が自分の周囲の病室には随分と多い。少なく見積もっても徘徊老人が一人、何をするにも咳き込みまくる(それもどうやら他人の注意を引くためにわざとやっているのが半ば以上あるらしい)のが一人いる。

病室は基本的に入り口の扉が開放されている。昼は換気のため、夜は看護師の見回りのためというのがその理由だ。自分のいる病室はトイレに近いこともあり、人の往来も激しい。件の徘徊老人も、一度自分の病室に間違って入ってきた。まったく逆の方向にある病室に向かって歩いているところを看護師に見つかり、連れ戻されることもしばしばのようだ。「ようだ」というのは、看護師が連れ戻している様子が声だけで分かるわけで、実際には見ていないから。

昼食はうどん、大根の和え物、魚のカレー風味揚げなど。

午後に、新しい患者が自分の病室に来ると知らせを受ける。元々二人部屋だった部屋に自分一人だけいたのだから、新しい患者が入れば空きベッドを使うのは当然。とはいえ、どんな人が来るのか少々不安になる。女性とか、感染症持ちの病人が来ることはないだろうが……それくらいの配慮はされているはずだ。

眼科の検査は長時間に渡った。昼食を取ったあとベッドでうとうとしていたらいきなりたたき起こされ、調子もあまり良くない状態で半ば引きずりまわされ、2階の眼科までつれてこられた上での長丁場の検査だったため、検査の途中から気分が悪くなり息も絶え絶えになる。おまけに付き添いの准看護師は「忙しいので。帰りは自分で帰れますね」とわけのわからない理由を述べてさっさと帰ってしまった。忙しいのはわかるけど、だからといって、と理不尽さを感じた。

やっぱり素直になりすぎても損をするだけなのだろうか。「教訓:正直者、親切心が莫迦を見る。まずは自己主張」とメモ書きノートに大きく書いて、悔しさを紛らわせる。

眼科検査の結果は特に問題なしとのこと。ただ、ちょっと糖尿の点で気になる点があるので、退院後二、三か月経ったら再検査した方が良いでしょうとも言われる。

夕食はご飯に豚肉生姜焼き、ほうれん草炒めなど。

毎日2回、1時間前後移動を拘束される点滴も、どうやら今日で最後らしい。痛いわけではないが、精神的なプレッシャーが大きかっただけに、点滴が無くなるだけでも大変ありがたい。それだけ病状が改善していると思ってよいのだろうか。いや、1週間やそこらで劇的な進展があると思うのは調子が良すぎか。

新しく隣のベッドに入ってきたT氏は、かなり身体が弱っていて、前にも何度か別の病院などで入退院を繰り返していたらしい。自分一人では歩くこともままならないとのこと。当然、ナースコールの回数も多くなり、さらにいびきがうるさいので、睡眠時間が削られることになる。仕方ないとあきらめ、寝ているふりをする。

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