「病気」は「気」の「病(やまい)」、と書くことから、そして「病は気から」との言葉からも明らかな通り、個人的な差はあれども精神的な状態が身体に反映されることが多々ある。入院中も特に検査前は、必至に「治れ治れ」と自分に念じたものだ。科学的根拠は何もないが、自分の身体に言い聞かせること、自己暗示をすることで、自然治癒力が高まるらしい。
要はポジティブに物事を考えることが重要。精神科の先生や心理学者、またはそれに類する学問の知識があればもっと体系的に説明が出来るのだろうが、自分にそういった知識は無い。かろうじて学生時代に一年ほど心理学関連の科目を修得したくらい。ただ、興味がないわけではなく、時々そのたぐいの本を読むことはある。
ともあれ、入院してある程度病状が落ち着いてからは、半ば意図的に「平静な精神を保つようかまえる」ことや「ポジティブに物事をとらえること」を心がけるようにした。ネガティブな事を考えてもどうしようもない場合は、考えたところで何かプラスになることは無いのだから「だったら気楽に考えた方がマシだ」というモノのとらえ方だ。世間一般に言われている「ポジティブシンキング」とは少々ずれている部分があるかも知れないが、意図するところはほぼ同じはず。
「入院編」でも語ったことだが、発病及び病状が悪化した最大の原因はストレス、それも恐らくは仕事上の、にある。単発的なものではなく、長年にわたって蓄積されたものだから、圧縮されもしたのだろう。反動として身体に跳ね返った時のダメージも大きかったに違いない。二つのプレートの接触と巻き込み、そして跳ね返りで発生するタイプの地震や、シェイクしまくった炭酸飲料水のフタを開けた時と同じイメージだ。
自宅療養期間を終了した後の現場復帰後も療養は続くことになる。当然、食事をはじめとした各種制限の他に、心身共へのストレスも厳禁。主治医も「会社には事情を説明してストレスを減らすよう、例えば仕事の量を以前の半分くらいにしてもらうようにして下さい」とアドバイスをしてくれた。
だが、現実的にはどう考えても無理な話。そんな話をしようものなら「ストレス無ければ成長無し」とか「そもそもその病気は怠け病だから」とか無茶な事を言い、下手するとストレス度は前より高まるかもしれない。というよりすでにこれらの言葉を受けていたりするから始末が悪い。病気に対する世間一般の理解度が足りないのか、それとも他人の事だからと軽視しているのか、どちらにしても悲しいけど、現実。
自分に出来るのは、自分の中で受けるストレスを出来るだけ軽減出来る、例えば受け流したりするように、考え方を変えること。一度は死にかけたこの人生、楽しく生きなきゃ損だよね。自分の事を考え、まずは自分の手の届く範囲できっちりと物事を片付けよう。「生きるのが下手だ」という自覚は前々からあったけど、今は特にその想いが強い。少しでも、もう少し上手に生きられるようストレスを受け流せれば、ストレスもあまり気にならず、上手な生き方が出来るかもしれない。