Asuka サーバー 土地争奪戦!
(注釈)
このお話は 1998年 のクリスマスの頃のお話です。
UO が登場したのが 1997年末頃で、日本サーバーが誕生したのが 1998年の 9月末日でしたから、まだ日本サーバーが誕生したばかりの
UO の初期のお話です。
文中で家の権利書を奪われて絶望している人々が出てきますが、当時の UO はまだインフレ状態ではなく、家の権利書を買うための4万G
というお金はすごく大金でした。
狩りで得られる収入は1時間で平均 1000G 程度の時代だったので、お金の価値は今の
10倍以上だったと考えてください。
また、当時は Trammel は存在しておらず、世界は Felucca ルールのものが1つのみでした。
つまり、常に PK や盗みの危険があった訳ですね。
(2000年4月記)
UO で新しい土地やシャードが公開されるたびに繰り返されてきた、家の土地争奪戦。
その始めての土地争奪戦は、1998年末の日本サーバーで起りました。
それはまだ日本サーバーが出来てから、3ヶ月もたたない時期のお話です。
この時の騒動は、まさに土地戦争。 そこはもう修羅場でした。
今回は、その時の話をしたいと思います・・・
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= Asuka 土地争奪戦!= (前編)
1998年9月末日、日本サーバー Asuka、Yamato
が始動しました。
そしてまだ始動してから2ヶ月もたっていない1998年11月23日、新しい家建築システム(現行の家のシステム)の導入が開始され、その準備期間として、家の建築が禁止され、権利書も売られなくなりました。
この新しい建築システムで、家と店舗の区別化やフレンド制の導入などが行なわれたのですが、大きな変更点の1つとして「テントの廃止」がありました。
テントとは、家よりも安く、中に草や木があっても建てられると言うもので、アイテム保管量は少なかったのですが、店舗としては最適のものでした。
かつて街道沿いはこのテントが立ち並び、それによって商店街が形成されていました。
しかし、この時のシステム変更でテントがまとめて廃止されたため、多くの土地、特に街道沿いの店に向いた土地がまとめて空いたのです。
さらに、この時まだ日本サーバーが始動して2ヶ月もたっていません。
その段階で建築規制が敷かれたため、多くの土地がまだ空いたままでした。
そのような状況で1ヶ月の建築禁止、家Deedの販売禁止が実施されます。
多くの人が、家を、店を建てるため、その1ヶ月の間にお金を貯め、家解禁の日を待っていたのです・・・
私と、私の友人も、夢であった2階建て建設を目指し、その1ヶ月の間に一生懸命二人でお金を貯めました。
私は Britain 近辺にショップを持つ、という希望もあったので、そのお金も貯めていました。
そして、がんばって貯めたお金は2人合わせて25万G。
私はショップ担当、友人は2階建てを担当する事に決まります。
Xデー前日、2人は入念に計画を立て、建築候補地を探し、大工屋のルーン作成し、万全の状態で翌日に備えました。
ログアウトは Britain の大工屋の中。
室内でキャンプをして、寝袋を使用します。
同じように大工屋でログアウトしようとする人は何人かいて、その人達と翌日の健闘を称えあいました。
・・・そして、運命の建築解禁日、12月23日が訪れます・・・
その日は平日だったのですが、私はたまたま仕事が休みだったので、朝からUOに入ることが出来ました。
友人は、その日に合わせて仕事を夜勤にシフトしました。
2人はメンテナンスダウン中からUOを起動し、さらにUOモニター(*当時利用できたサーバー監視ソフト)を起動させ、サーバーの状態を監視しつづけます。
片手には携帯電話。 リアルの知り合いですから、通信手段は IRC や ICQよりもこちらが上。
連絡を取り合いながらその瞬間を待ちます。
そして・・・ タスクバーのUOモニターの赤いランプが緑に・・・ 変化しました!
いよいよスタート!! 速攻でパスワードを入力しUOにログイン!!
おそらく同じように即ログインした人が日本中で数百人はいたでしょう。
ところが、ここで早くも最初の選別が行なわれます。
一気に大勢の人がログインしようとしたため、ログインサーバーに負荷がかかり、多くの人がそのままラグで固まってしまったのです!
その時、私は・・・ ログインに成功! ラッキー!
しかしすぐに携帯の向こうから友人の声が。 「ログインできない!」
友人はログインに失敗した模様、しかしそれに構っているヒマはありません!
大工屋に現れた私の周囲には、次々と人が現れます!
幸い大工の店員は真横にいたため、すぐに Vendor
buy、同時に Hiding。
バックパックに現れた Deed を掴んでスリ対策のため他の袋に放り込み、すぐさまリコール!
Deed 購入に成功! 移動した先はもちろん、第一建設予定地!
その場所は Britain
南の街道沿い、まさに一等地です。
そして到着は私が1番でした。 すぐに Deed を Wクリックして建設しようとするのですが・・・
建設できない! その場所にはクマがいたのです!
しかも、[Tame](*ペット)状態。 つまり、誰かがその場所を占めようとして、予めペットを放置していたのです。 この建築失敗の時間が明暗を分けました。
次の瞬間現れた別の人が、熊の位置を避けて少し離れた所に家をドン!
「しまったっ! 先を越されたっ!!」
さらにその場所には、続々と大勢の人がリコールしてきます。
そのためますます状況は悪化!
大勢の人達自身が邪魔になって余計に建設出来なくなったのです。
結果、だれも家を建てられない状態に。
私もその近辺で権利書を使いまくりますが、全く建てられません。
まだその時点では、人や動物がどの範囲まで建築の邪魔になるのかというのもまだよくわかっていませんでした。
「なんだこのクマ!?」 「どかせ!!」 「誰だこんなことする奴は!?」
様々な罵声が飛び交いますが、Stop
命令が出ているらしくクマも全く動きません。
そのうちクマは集中攻撃を浴びて殺されますが、死体がその場に残るため、ますます邪魔な事に・・・(*当時は死体やキャラクター、アイテムは建築の障害になりました)
この時点で、私はこの場所の建設をあきらめ、第2候補地へリコールしました。
しかし、すでにタイムロスが大き過ぎました。 第2候補地も、第3候補地もすでに埋まっていて、私が家を建てるスペースは空いていませんでした。
スタートしてからまだ3分程度でしたが、状況は秒単位で激変していたのです。
結局、Britain
の一等地にショップを建てると言う夢はあきらめてしまいました・・・
しかし、その場合の第2目標も決めていました。
それは、ホームタウンである Skara Brae
の近郊に拠点 or ショップを建てる事。
すぐに Skara Brae
にリコールし、場所を探します。
さすがにこちらはまだまだ空いている土地が多く、街道沿いの良さそうな場所を見つけて家を建築します。
パッ! 権利書が消え、その場に家が現れます。
「やったー! 新しい家だぁー!!」
妥協はしましたが・・・ まあ、建てれたのだから良しとするかー、と自分に言い聞かせつつ、私のショップ建設は終わったのでした。
しかし・・・ これで終わった訳ではありません。
いや、こちらはサブ。 メインの目的は2階建て建設です!
まだこの段階でのんびりしているヒマはありません!!
さて、その2階建て担当の友人はその頃何をしていたのかと言うと・・・
友人がログインできたのは、私が第1候補地をあきらめた頃でした。
そして、現れた大工屋で友人の見たものは・・・
友人は、私以上の修羅場に巻き込まれていたのです!
一体、この後どうなったのかは・・・ また次回。
=第一次土地争奪戦!= (中編)
1998年のクリスマス前、テントの廃止と建築規制の解除から始まった土地争奪戦にて私はブリティン近辺の一等地にショップを建てようとしましたが・・・
夢破れました。
しかしもう1つ、いや本当の目的である2階建ての建設は、まだその時、終わっていませんでした。
2階建て担当の友人は一体その頃、何をしていたのかというと・・・
サーバー混雑に巻き込まれた友人は、サーバーの起動と同時にはログインする事ができませんでした。
友人がログインしたのはサーバーアップして数分後・・・ 私がすでに第一建築場所をあきらめ、他の建築場所を探して飛び回っている頃でした。
サーバー混雑の中、何とかログインした友人は前日ログアウトしていたブリティンの大工屋に現れます。
すでに大工屋の中は、ぎゅうぎゅう詰めに近いぐらいの大勢の人が!
すぐに友人は人ごみを掻き分け店員の横に行き「Vendor Buy!」、2階建ての権利書を買おうとしたのですが・・・ 寸前でキャンセルしました。
なぜかというと・・・ 周囲で次のような声が飛び交っていたからです!
「スリだ!」 「家の権利書盗られた!」 「泥棒がいるぞ!」 「最悪!盗られた!」
そう、大工屋の中には多数のシーフが潜んでいたのです!
この頃、まだ家の権利書は盗まれるアイテムだったのです。 しかも重さも 1Stoneですから、簡単に盗まれます。
大勢の人がサーバー起動と同時に権利書を買うのはわかっていたので、それを狙って多くのシーフがプレイヤーに紛れて大工屋で潜み、訪れるプレイヤーのバックパックを片っ端から開き、Stealing
をプレキャスト、誰かが権利書を買ったと同時に盗みまくっていたのです!
もしシーフが盗みに失敗して死んだとしても、権利書は死体にそのまま残っているので、その場で激しいルート合戦が行なわれます!!
いずれにせよ、買った人に権利書は戻ってきません・・・
多くの人がここで、マイホームを、ギルドハウスを奪われました。
友人のバックパックも大工屋に現れたと同時に覗かれていると思って間違いありません。
こんな状況で権利書を買うのは自殺行為です!
しかし、そうこうしている間にも家の建てられる土地はどんどん埋まっていきます。
考えているヒマはありません!
友人は少し様子を見ていましたが、結局ダメだと判断し、予め用意していたルーンで各地の大工屋を飛び回り2階建てを探します。
しかし、ログインが遅かった事も影響し、すでに2階建てを売っている店はありませんでした。
さらに他の街の店にもやはりシーフはいます。
結局、主要都市の大工屋をほぼ回りましたが、2階建てどころか、タワーさえ売り切れている状態でした。
携帯で逐一連絡を受けていた私も、スカラブレイに家を建設後、様子を見るためブリティンに向かいます。
そして大工屋についた時、その店の前で見たものは・・・
「ああ・・・ せっかく家建てられると思ったのに・・・」
「俺も一生懸命お金貯めたのに、一瞬でパーだよ・・・」
「私なんて2階建て盗られたよ。 ここでグチっても仕方ないんだけど・・・」
「ギルドハウスの権利書盗られた・・・ みんなに会わせる顔がない・・・」
そこは、この騒動の被害者の嘆きの場となっていました。
周囲にはスリの死体が多数転がっていましたが、その中には明からに一般の人の死体も含まれていました。
そのあまりの出来事に、その場で自殺してしまったのでしょうか?
「これでいいのかオリジン!?」 私もそう思いましたが・・・
しかし、私はまだ土地戦争の真っ最中。 そこで止まっているヒマはありません!
すぐに大工屋の中に飛び込みます。
予想通り、大工屋の中にはスリと思われる人物が多数。
もはや姿も隠していません。
店の中では、権利書を買おうとするプレイヤーと、スリの間で激しく罵声が飛び交っています。
私は店員に向かって Vendor buy
と言い、権利書の数を確認します。
この店には、まだ2階建ての権利書は売れ残っていました。
ただ、確かにこの状況では買えません・・・ イチかバチかはあまりに危険すぎます。
各地の大工屋を探し回っていた友人も、やはり2階建ては売っていないと言い、
あきらめ気味でした。
その後、2人でどうすればいいか相談します。
その時、友人がポツリと、こうつぶやきました。
「バッカニアーズデンなら、売っているかもしれない・・・」
さてこの後どうなったのか? 続きはまた次回。
=第一次土地争奪戦!= (後編)
1998年年末の土地争奪戦、2階建てを買おうとした友人と私ですが、スリの妨害やログイン困難もあり、主要都市の大工屋では2階建ての権利書を買うことは出来ませんでした。
今後どうするかを2人で相談している時、友人がぽつりとつぶやきます。
「バッカニアーズデンなら、売っているかもしれない・・・」
さて、その後どうなったのかと言うと・・・
バッカニアーズデン! ガードのいない無法者の街。
そこではどんな犯罪も罰せられません。 そんな場所こそ、シーフやPKの格好の餌食になりそうです。 そんな所で2階建てを買うなんて危険すぎます!
そう思った私は最初この考えに反対しましたが、友人も主張します。
「だからと言ってこのまま何もしないんじゃ、結果は同じだ!」
・・・確かにその通りです。 こうしている間にも、建築可能な土地はどんどん減っているのです。
バッカニアーズデンは危険ですが、だからこそ売れ残っているかもしれません・・・
結局、この最後の手段にかけてみる事にしました。
「じゃあすぐ行って来る!」 結論が出て、すぐに友人はバッカニアーズデンにリコールして行きました。
本当は合流すべきだったのかも知れませんが、事態は一刻を争っています。
私は携帯電話でその報告を待ちます。
・・・その待ち時間は、すごく不安で、長ーく感じました。
2、3分だったでしょうか? しかし私には10分以上に長く感じました。
1ヶ月近く2人でがんばって貯めたお金です。それが一瞬で無くなるかも知れない、その不安と焦りはすごいものでした。
が、私には待つしかできません。 無言の携帯からの連絡をただ待ち続けます・・・
そしてしばらく後・・・ 携帯の向こうからいきなり弾む声が!!
「買った! 1個だけあった!!」 「すぐバンクに預けて!」 「もう預けた!」
「ナーーーイス!!!」
買えました! 話によるとバッカニアーズデンには誰もいなかったそうで、一応大工屋を歩き回ってみても、シーフが潜んでいる気配はなかったそうです。
(*まだこのときステルスは導入されていません)
危険な分、やはり穴場だったようです。 それでもその権利書が最後の1つらしかったので、ラッキーと言わざるおえませんでした!
「うっわー、めっちゃドキドキしたー!」 とは友人の感想。
ここで2人でしばらく喜び合いますが・・・ しかし、まだ権利書が買えただけ。
これが形にならないと意味がありません。
すぐに銀行に戻り、2人で装備を整えます。 建築の時こそが一番危険です。
双方フルプレートを着込み、秘薬もそろえ、いざという時は私がしんがりになって友人は即リコールアウト、という作戦も立てます。
シーフがこれだけいる以上、PKも出没していると考えて間違いありません。
実際、この日は一日中 PK が出まくっていました。
まだこの頃、Deed はただのノーマルなアイテムだったので、PK されれば当然死体の中に残され、奪われるものでした。
特にひどかったのは、Britain
西の三叉路と東の森の街道沿いと、Deceit 島。
中でも Britain 西の三叉路近辺にはサーバーアップ直後から Deed 狙いの PK
が待ち伏せていて、現れる家建築に来たプレイヤーを片っ端から襲い、多くの人が彼らに家を強奪される結果となっていました。
そのために、手前の山道の近くでは進みたくても進めないプレイヤーが大勢いて、家を建てた人は、他のプレイヤーがPKに襲われるのを尻目に見ながら家を建築するという、まさに修羅場となっていたそうです。
この日、ブリタニアの各地で家を奪われた人は、後を絶ちませんでした。
私と友人は完全武装を終えると、すぐに用意していた建築場所に向かいましたが、予想通り予め予定していた場所は全て埋まっていました。
そのためPKを避ける意味も含め、Skara Brae の南から、まっすぐ Trinsic 方面へ向かって進み、森の中を中心に2階建ての建設場所を探します。
しかし、そう簡単には見つかりません。 一見建てられそうに見えても、実は石が1コ邪魔だったりとか、草が邪魔になってたりとか、そういうのが多いです。
そういう時はもう、石をぶん投げて、草を引っこ抜いてやりたくなりますが・・・
残念ながら出来ません。
たまに、別のプレイヤーと出会うと、二人で「やばい」と言いつつその場で身構えます。
向こうも、「やばい」と思っているのか、身構えます。
みんな同じ状況のようですね・・・
懐に20万G分が入っているので気ばかり焦りますが、なかなか土地は見つかりません。
しかしTrinsic にかなり近づいた頃、崇高の神殿に近いあたりで、良さそうな土地を見つけます。
で、建築してみますが・・・ 建たない。
でも、ここなら、と思えるほど広い。 周囲の動物を全て移動させ、自分達自身もその場所から遠くはなれて建たないか調べていたその時・・・
ドン! いきなり2階建てが! 夢にまで見た2階建てがその場に!!
「建った!」 友人が携帯で叫びます!
「やった! 建った!」 「やったー!」 「うおおおおーーー!!」
即攻で扉を開けて中に飛び込み、カギをかけて家の中を走り回ります!
やったー! 2階建てだーー! 建てられたー!
2人で当分の間、喜び合っていました。
携帯を通じ、私達は互いの健闘をしばらくの間 称えあったのでした。
それは、UOをやって来て、一番嬉しかった瞬間でした。
こうして、私達の土地争奪戦は終わったのでした・・・
後日、UO関連のBBSでは、権利書を盗まれた人、PKされて奪われた人の嘆きのコメントと、それをバカにするPKやシーフのコメントで埋まり、荒れまくりました。
オリジンへの恨みの言葉も数多く出ていました。
2階建てを奪われた人、ギルドハウスを盗られた人、中には、みんなで貯めたギルドハウス用の権利書を奪われ、責任を感じてそのまま行方不明になった人もいたようです。
他のシャードでは、城の権利書を奪われた人もいました。
大きな混乱と悲喜こもごもを巻き起こして、98年の土地争奪戦は幕を閉じたのです。
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以上が、以前にあった土地争いの内容です。
さて今後の土地争いは、一体どういう結果になるのでしょうか?
その時の、みなさんのご武運をお祈りします・・・